「新規事業」の規模感は?
新規事業創出の取り組みをしていると、「類は友を呼ぶ」というべきか、社内外で新規事業創出の取り組みをしている人と交流することが多くなってきます。
勉強会やセミナーなどで一緒になることがあれば、初対面の飲み会でなぜか話が合うなと思ったら、「事業開発グループ」とか「ビジネスイノベーション戦略部」などといった部門所属の方で、「いま新しい事業の立ち上げを任されていて…」なんて方が多かったりします。
その様な方の話を聞いていると、将来的なビジョンの規模感について、それぞれの人のイメージが合っていない場合が多いと感じることがことが多くありました。
ある人は数億単位の売上規模を考えているし、他の人は数百億単位の未来を考えていたのです。
「新規事業」の規模感のイメージは人によって異なる
端的に言えば、
- 「事業」を考えている人
- 「プロダクト」を考えている人
によって、イメージが大きく変わると思われます。
前者は、いかにして既存アセットを活用して市場ドメインを拡げられるかを考え、その為のエコシステムを検討していることが多いです。
一方で後者は、何かアイデアをカタチにしてひとつのプロジェクトとして進めて行くことを目標にしているように思われます。
もう少し言えば、前者はビジネスクリエーター、後者はプロダクトマネージャーとして振舞っているように見えます。
また、後者は「自分自身が後者ではない」、つまり「事業を考えている」と思っていることが多いようでした。
どちらが良いということは全くないのですが、もし「新規事業を創出している」というのであれば、やはり前者のマインドセットでありたいものです。逆に後者のマインドセットであれば、それは新規事業創出ではなくてプロダクトマネジメントに考え方が近いかな、と感じます。
例えば「ソニー」
ひとつ例え話をすると、総合電機メーカーのソニーが1970~80年代に金融関連に進出し、ソニー銀行・ソニー生命・ソニー損保などの会社を立ち上げました。
この取り組みは、一般的に言う「新規事業」の取り組みといっていいと思います。何と言っても、ラジカセやテレビをつくっていた企業が、保険事業に取組むのですから。
損害保険といっても、企業向けの保険設計などはそのひとつひとつがプロダクトであると言えます。
つまり、「プロダクトの集合体」が「事業」であると考えることが出来ます。
プロダクト:事業 = N:1
ところが、この「プロダクト」を「事業」と捉え、「新規事業」を考えている場合が多いように感じられました。
理由は「新規事業」を立ち上げようとする背景
先述の知り合いの方の多くは名前も知れた大企業所属の方が多いのですが、このような活動に参加する背景としては、
- デジタル・ディスラプションに対する強い危機感
- 既存事業の業績の伸び悩み
- 人財確保の為の施策
等が考えられます。
ところが、このような背景を自らが体験あるいは実感してこのような活動に取り組んでいるかというと、必ずしもそうではありません。
多くの場合は「会社」あるいは「経営層」の判断が源泉であり、そこから降りてきた目論見を託されているケースが多いように感じられる。
もう少しいうと、真に課題を抱いている人(経営層)と、その課題を解決しようとしている人(現場)が、異なる人になっているのです。
そして、多くの場合経営層は、前述の例でいうところのソニー生命やソニー損保を「新規事業」としてイメージしているのです。
一方で、現場サイドは、その様な規模感のイメージが伝わっていない為、どうしてもこれまでの既存事業のプロジェクトベースで物事を考えてしまうのです。
「着眼大局」でいこう
まずはこのギャップを経営層と現場サイドできちんと共有し、少しでも埋められるように対話を続けることが必要だと思います。
それを怠ってしまうと、いざ提案のときに、まったく話がかみ合わなくなるからです。そうなると、ほぼ提案が通る見込みはないでしょう。
ものごとを幅広く見つめる「着眼大局」の視点を持つと共に、経営層の視点や規模感の捉え方を考える視座を持つと良いかもしれません。
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