『RUNNING LEAN』による顧客とユーザの違い
書籍『RUNNING LEAN』を読んでいた時に、わりと冒頭の方で
顧客とユーザーを区別しましょう
ということが書かれていました。本書によれば、
- 製品にお金を払ってくれる人が「顧客」
- 「ユーザー」はお金を支払ってくれない
とありました。
ITILによる顧客とユーザの違い
ITILとは、Information Technology Infrastructure Libraryの略で、ITサービスのマネジメントにおけるベストプラクティス集です。
IT系の企業に勤めていれば誰でも聞いたことがあるはずで、特にシステムの管理や運用にあたる担当者は、その資格試験(ITIL v3 Fundationなど)の受験を求められていたと思います。
実はこのITILにも、顧客とユーザに関する記述があります。
- 顧客:商品やサービスを購入する人
- ユーザ:ITサービスを日常的に利用する人
となっています。『RUNNING LEAN』で言っていることとほとんど変わらないですね。
ちなみに、ITIL v3ではこの他にプロバイダという立場が登場します。
- プロバイダ:顧客にサービスを提供する組織
プロバイダは、顧客からお金をもらい、ユーザにITサービスを提供する、という図式になるようですね。
顧客とユーザは混同して考えられがち
ところが、新規事業創出の取り組みをしていて、様々な人にプレゼンをしているうちに、顧客とユーザを混同して考えている人が非常に多いと感じるようになりました。
これは特に製造業の従業員には多い傾向のように思われます。
製造業では「モノ」を作って、それを販売し、対価として「お金」をもらいます。例えば、コンシューマー向けのデジタルカメラを考えてみれば、デジタルカメラを購入した人が、ほぼそのデジタルカメラを使用します(他の人にプレゼントする、とかは置いておいて)。
したがって、
顧客 = ユーザ
となっていました。ですから、そもそも顧客とユーザが異なるという発想が無かったのかもしれません。
だが、上記の定義でいえば、顧客とユーザは必ずしも同じではないし、顧客の中にユーザが包含されるケースもあります。
例えば、ある大企業にITサービスを導入してIT部門からお金をもらったとしたら、顧客はその企業(またはIT部門)となりますが、ユーザはその企業の従業員であり、微妙に異なります。
これが何を意味するかというと、顧客とユーザのニーズが異なる場合があるのです。
意識すべきは顧客かユーザか
ここで考えるべきが、事業開発においてどちらを意識すべきか、という問題です。
新しいソリューションのアプローチを思い浮かべてみると、大体「ユーザ」起点になっていることが多いです。
例えば、デザイン思考では、人間の行動を徹底的に観察して、隠されたニーズをとらえるところから始まりますが、ここでいう「人間」はほぼ将来の「ユーザ」と同値でです。
「社会課題」とか「お困りごと」を捉えろ!という言葉もよく聞きます。これも将来の「ユーザ」起点ですね(課題やお困りごとが解決されることで喜ぶのは、ユーザにしかできないため)。
自然と、お金を支払ってくれる「顧客」のことを考えるのが後回しになってしまいます。
ところが、どんなに素晴らしいビジネスアイデアでも、お金を払ってくれる「顧客」がいないと途端に頓挫してしまいます。
だからこそ自分は、「顧客」を意識することが非常に重要だと思っています。
お困りごと起点でももちろん構わないのですが、常にお金を支払ってくれる「顧客」のことを視野に入れて活動するのが良いかもしれません。
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