概要
日本の現場に寄り添ったアジャイル開発の神髄を、ストーリー形式で学ぶことが出来る良書です。その名の通りチームの「改善(カイゼン)」を求めて、一人で、二人で、チームで、進化を続けていく物語になっています。
バリューストリームマッピング、仮説キャンバス、カンバン、スプリントレビュー、などなど、様々なプラクティスの簡潔な説明も記載されており、チームビルディングやチームマネジメントを学び、実践したい人には大変おすすめです。
大切なのは「なぜ?」を考えること
企業で仕事をしていれば、「チームを改善したい」「もっとうまいやり方があるはずだ」という思いは誰でも抱くものだと思います。
特に、20代後半から30代にかけての若いリーダやマネージャは、この思いを具体的にどうやってチームの改善に繋げていくか、常日頃から考えているのではないでしょうか。
そんな背景の中で、変化に対応しながらイテレーティブに開発を進めるアジャイル開発の様々なプラクティスが、よくチームのアクティビティに取り入れられることが多い、と聞きます。代表的なのは「デイリースクラム」(たちっぱ、朝会、なども含む)などでしょうか。
このようなプラクティスを詳細に説明した書籍やWebサイトは様々あるのですが、「やり方」しか書いていない場合も多いですね。
その点、この書籍はストーリー調となっているので、
- このような課題が発生した
- →それを改善するためには、こんなプラクティスがある
という流れで紹介されており、「なぜそのプラクティスなのか?」がきちんと説明されています。これは非常に重要なことで、「なぜ?」が考えるか考えないかで、チームの納得感・腹落ち感が大きく違うからです。誰でも「やらされているやり方」では、高いスキルは発揮できないでしょう。
イノベーションへの応用
イノベーションといえば、斬新なアイデアやテクノロジーのブレークスルーが重要だと思われがちですが、自分はあまりそうは思っていません。むしろ、チームビルディングやそれに基づいた業務のプロセスが非常に重要だという思いを持っています。
スタートアップや新規事業で組むチームは、誤解を恐れずに言えば、ある意味「寄せ集め」のチームです。特に既存企業で新しく事業を立ち上げる場合は、完全にアウトサイダーとなる。事業部制を敷いていたらそれぞれの事業の業績目標を達成する方が第一優先になるから、当たるかどうかも分からない新規事業の部門やチームに、エースを投入することはないからです。
そんな中で、少しでもチーム力を向上させるためには、体系的に基づいた考えた方やプラクティスを有効に活用していることが必要となります。
例えば、この書籍で紹介されているような「バリューストリームマッピング」で顧客の価値の流れを可視化してチームで共有してもいいし、「ふりかえり」で常に仕事のやり方を見直して改善を促してもよいし、「プロダクトバックログ」で「誰がなぜ何を求めているか」を明確化するのも良いでしょう。
「アジャイルの本でおすすめは何?」と聞かれたらまずは「カイゼン・ジャーニー」
アジャイル開発やチームビルディングでたまたまおすすめの本を聞かれる機会が最近3回ほどありました。その時々状況は異なっていたのですが、すべてで「カイゼン・ジャーニー」を紹介しました。
この書籍は、プラクティスがコンパクトに整理されているだけでなく、ストーリーで「なぜ」をきちんと紹介しながら、共感が得られるような仕組みになっています。
チームやプロセスを「カイゼン」したい人には、ぜひおすすめしたい一冊です。
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