概要
- カリスマ的リーダーやエースがいなくても、
- 今いるメンバーで、
- まわりの期待値を超える成果を生み出す(=ジャイアントキリングを起こせる)チームをつくる
ための「あり方・やり方」を考えていきます。
とあります。そして、
ひとつでも多くのグループが「真のチーム」に成長し、夢中で仕事をする人が増えて、世の中がさらに元気になる
ーそんなきっかけが作れたら幸いです。
と述べられています。
チームってほんと面白いですよね。
1人1人の個人としてのスキルの総和よりも大きなことを成し遂げることもあれば、お互いを打ち消し合ってしまう場合もある。
私も普段仕事をしていて、ただの人の集まりなのに「まるで生き物のようだなぁ」「どうなるか楽しみだなぁ」などと感じています。
そんなチームのあり方について考える書籍になっています。
ジャイアントキリングって?
本書のサブタイトルにもある「ジャイアントキリング」とは一般的にスポーツにおいて格下のチームが格上のチームに勝つことを言い、日本語で言う下剋上にあたる言葉です。その名の通り、giant(巨人)をkilling(倒す)ことから来ています。
ここでは、その名前を関した作・綱本将也、画・ツジトモによるマンガ『GIANT KILLING』を指しています。
ジャイアントキリングはフットボール(サッカー)の魅力のひとつです。
フットボールでは特に次のような要因がジャイアントキリングをもたらすと言われています。
- 実力差以上の意欲: 格下チームが、強豪チームへの対抗心を強く持ち、並外れた集中力とチームワークを発揮する場合
- 運: 強豪チームのミスや、格下チームにとって有利な状況が重なるなど、運が味方する場合。
- 戦術: 格下チームが、強豪チームの弱点を見抜き、それを突くような巧妙な戦術を用いる場合。
- プレッシャー: 強豪チームが、勝利へのプレッシャーを感じて、実力を発揮できない場合。
本書を読んで、フットボールだけではなく普段のビジネスにおいても同様のことがいえるのではないか、と感じるようになりました。
チームとは何か?
グループとチームの違い
本書の第1章ではある問いがあります。それは、
そもそも「チーム」とは何でしょう?
「グループとチームの違い」って、何でしょう?
というものです。これに対する回答の例として、
「チームは一体感があるけど、グループは一体感がないか、弱い感じがする」
「『日本代表チーム』とは言うけど、『日本代表グループ』とも言わないね」
「『チームワークがいい』とは言うけど、『グループワークがいい』とは言わない」
「よく『グループ会社』って言うけど、『チーム会社』って聞いたことなくない?」
といった例を挙げています。
チームづくりはジグソーパズルのようなもの
その上で、
チームづくりは、ジグソーパズルに似ている
と述べています。すなわち、
①ピースをざっくり並べる
②ピースの凹凸を組み合わせる
といったプロセスを経るのですが、①のステップで止まってしまっている組織が多いと述べています。そのような状態を「グループ」と呼ぶそうです。
一方で、②は凹凸がピッタリはまる組み合わせを探すために、ガチャガチャとピースをぶつけ合わせることになり、互いに自己主張し、納得のいく形を探していくことになる、それを経て「グループ」は「チーム」に変わり、それまででは考えられなかったような「期待値を超える」パフォーマンスが発揮できるようになる、といいます。
ガチャガチャやるのは非効率?
ですが、
ガチャガチャやっている間は、自分の仕事も相手の仕事も進まない
多くの組織は、その組み合わせ作業を「非効率」と考えて、やろうとしない
と述べられています。
私はこれを読んで「確かにそうだ」と感じました。
私が知っている会社の組織のメンバーはとてもまじめで規律を重んじるのですが、それがゆえに効率を非常に重視します。そして、その「ガチャガチャやる」という行為を効率が良くないと考えているように私には感じられました。
「ガチャガチャやる」のは確かに時間がかかりますし、もどかしい気分にもなります。
外からそのチームを見ていると、なかなか効果が表に見えてこないので、まどろっこしい気分になります。
ですが、その「ガチャガチャやる」ことによって、どのようにピースを当てはめていけばゴール(ジグソーパズルの完成)に至ることが出来るのか、お互いが議論をし、お互いの考え方を理解し、共通の理解を得ることが出来るようになり、そしてチームが生まれていくのだと思います。
ガチャガチャやる≒対話
では、この「ガチャガチャやる」とは具体的に何なのか?
私は対話だと思いました。一方的な上意下達ではなく、受動的な応答でもなく、対話です。
このヒントとなるシーンがマンガ『GIANT KILLING』内にも描かれています。
監督の達海がキャンプ初メニューで「自習」を促すシーンです。おまけにチームのベテラン村越には「口出し禁止令」を出します。
突然の状況に戸惑う選手たち…。勝手に練習を始める若手選手や「このような練習にしろ」と指示する先輩選手も出てきて、チームは混乱に陥ります。ですがここにヒントがありました。
選手たちはどういった練習をしたら良いか各自で考え、選手同士で対話を始めたのです。
最初は”口論”に近いような形でしたが、だんだんとお互いの考え方を理解していきながら練習が進んでいきました。
本書でもそのヒントのようなことが書かれています。
コミュニケーション量を増やすこと
だそうです。シンプルでありながら強力な手法ですよね。ビジネスの現場でも、対話を通してお互いを理解することで、次のステップに進めるかもしれません。
対立や衝突を歓迎する
本書では、面白い名づけをしています。それが「フォーミング体質」と「ストーミング体質」です。
チーム作りにおいては、最初のステップとしてフォーミング(形成期)、次のステップとしてストーミング(混乱期)があると本書では述べられています。
フォーミングが進んでいくと、コミュニケーション量が増え、互いの関係も近くなって雰囲気はよくなっていきます。
と述べられている一方で、
自己主張する人が増えてくる
意見の対立・衝突が起こってパフォーマンスが低下する
そうです。そして、チームはストーミング(混乱期)に入るのですが、このストーミングなくしてジャイアントキリングは起こせない、とされています。
ですが、混乱が起こると、慌ててしまいがちですよね。チーム内の誰かと誰かが口論していたらそれを止めたいと思う方もいるでしょう。
本書では、ストーミングに入ったときに慌ててフォーミングに戻そうとするタイプの人のことを「フォーミング体質」と表現しています。
フォーミング自体は決して悪いことではないのですが、せっかくストーミングにいったのにフォーミングしてしまっては、その先に進むことが出来ません。
一方で、『GIANT KILLING』の主人公である達海のように、混乱を面白がるタイプの人を「ストーミング体質」と表現しています。
チームにおいては、敢えてこのようなストーミングを楽しむ姿勢が必要になってくるんですね。
コメント