概要
スタートアップのバイブルとも言われる「リーン・スタートアップ」(The Lean Startup)の副読本であり、リーンスタートアップの実践的なテクニックについて具体的に記載しているのが本書です。
ページ数も(オライリーの書籍にしては)薄く、全編を通して非常に読みやすくなっています。
リーンキャンバスで全体像をつかめ
本書では、「ビジネスモデル・ジェネレーション」で説明している「ビジネスモデルキャンバス」を改変した「リーンキャンバス」について紹介しています。
CloudFireというファイル共有アプリを例にしてこのリーンキャンバスを描き、全編を通してこのリーンキャンバスを育てていく形でビジネスモデルの思考プロセスを説明しています。
PS-FitとPM-Fit
本書では冒頭の「メタ原則」において、PS-FitとPM-Fitについて紹介をしており、
PS-Fit(Problem/Solution Fit)で解決に値する課題があるか?を、
PM-Fit(Product/Marketing-Fit)で誰かに必要とされるものを構築したか?を、
それぞれ検証するとしています。
スタートアップには3つのステージがあり、PS-Fitが第1ステージ、PM-Fitが第2ステージ、拡大(Scale)が第3ステージ、とされています。
1st:PS-Fit ⇒ 2nd:PM-Fit ⇒ 3rd:Scale
※ちなみにPSF(ぴーえすえふ)という人もいますが、自分は初めてこの概念を教えてくれた方がPS-Fit(ぴーえすふぃっと)と発声していたので、こう表記しています。どちらでも良いと思います。
そして、このPS-FitとPM-Fitのステージでは、検証による学習に集中しなさいよ、うまくいかなかったらピボット(軌道修正)しなさいよ、と言っています。
言い換えれば、PM-Fitが終わるまでは、学習を最大化できるように設計する必要がある、ということです。
構築した製品を世に出し、しかるべきフィードバックを得て、学習する。
自分は、ここが非常に重要だと感じています。
「構築した製品で学習する」という考え方は、例えば日本の品質保証部門の担当者にとっては、あまり受け入れられないかもしれません。なぜなら彼ら/彼女らは、「学習」が終わり切って品質が担保されたことを確認して、初めて判を押して出荷を承認するからです。
だが、リーンスタートアップではそうではありません。「学習」を重要視するという考え方やプロセスの転換、パラダイムシフトが必要となるのです。
優れた顧客インタビュー方法論
本書で最も優れているのは、顧客インタビューの具体的な方法論を紹介している点です。
- 課題インタビュー
- ソリューションインタビュー
- MVPインタビュー
と、各フェーズごとのインタビュー手法について、インタビューの台本(流れ)、インタビューの内容(聞き方)、依頼のメール文面に至るまで、事細かに紹介しています。
※MVPとはMinimum Viable Product(実用最小限の製品)のこと。
例えば
本日は貴重なお時間をいただきまして、、、
、、、これが開発すべき製品なのかをしりたいのです。、、、
インタビューの流れとしては、、、
、、、まだ製品は完成していません。、、、
といった具合で(一部割愛)、具体的な文面が記されているほか、
言葉だけでなくボディランゲージや声の調子にも注目して
といったTipsさえも書かれています。どこかの営業職の指南書かな?と思ったぐらいです。
もちろん、この台本や文面をそのまま活用するかどうかは検討の余地があるのですが、どのように顧客インタビューを進めればいいか悩んでいる場合には、非常に役に立つテンプレートだと思います。
自分も何度かこのヒアリング手法を活用させてもらいました。
教訓ともいうべきヒトコト
個人的に本書が好きな点は、ビジネスプロデューサーが心得るべき教訓とも言える言葉が節々に散りばめられている事だ。それだけを拾ってみても、本書が読む価値のあるものだと気付くでしょう。
例えば、
誰もあなたのアイデアのことなんか気にかけていません。
誰も欲しがらないものを作るほど人生は長くないのです。顧客インタビューとは、何がわからないのかさえわからないことの探求です。
などです。手帳にでも書いて、ぜひ肝に命じておきたいですね。
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