「5回勝負して4回勝つ人」と「100回勝負して60回勝つ人」はどちらが優秀か?という広告について考えてみよう

どんな問題?

みなさんは、電車内でこのような車内広告を見たことはありますでしょうか?

「5回勝負して4回勝つ人」と「100回勝負して60回勝つ人」
ビジネスにおいて優秀な人はどちらでしょう?

株式会社識学

この社内広告は、「識学を広める事で人々の持つ可能性を最大化する」という経営理念を持った株式会社識学が掲出したものです。

答えは?

筆者もこの広告に興味を持ち、記載されたQRコードから辿って、広告を出している「識学」のWebページに辿り着きました。

「5回勝負して4回勝つ人」と「100回勝負して60回勝つ人」ビジネスにおいて優秀な人はどちらでしょう?
マネジメントには正解なんてない。頼れるのは自分の経験だけだ。 そんな風に思ってはいませんか? だけど、もしも、マネジメントに“こうすればうまくいく”という正解があるとしたら。 きっと仕事の成果も、毎日の景色も一変するはず。

そこでは以下のように紹介されています。

おそらく、前者を選ぶかもしれません。しかし、それが誤解の始まりです。

成約率80%の人が、10件中8件の成約を取ってきたとしましょう。
一方で、成約率50%の人は、50件中25件の契約を取ってきたとします。

いかがでしょうか。これでも、前者のほうが優秀だと思うでしょうか。

この場合は、後者のほうが評価されなくてはいけません。

株式会社識学 Webページより抜粋

一見すると前者の方が優秀だと思われがちだが、一概にそうとは言えない、ということのようです。

一方で、この広告はインターネットのSNSを中心に話題を呼び、様々な見解が出されました。

「5回勝負して4回勝つ人」と「100回勝負して60回勝つ人」どっちがビジネスにおいて優秀?→正解が理系にとってはイラッとすると話題に : まとめダネ!
「5回勝負して4回勝つ人」と「100回勝負して60回勝つ人」どっちがビジネスにおいて優秀?→正解が理系にとってはイラッとすると話題に。

いくつか抜粋してみましょう。

  • 答えがあるのは変。そもそも機会の数が不明。
  • 実際のビジネスの現場では、「これだけでどっちが優秀かなんてわからない」が正解だと思う。
  • 営業職なら後者が優秀ですが、開発職なら前者が優秀。

このように、条件によってどちらが優秀かなんてわからないのでは?という見解が多いようです。

野球の打率の話との関係

実はこの件は、以前ご紹介した「【用語コラム「確率」】野球の打率と営業活動の深〜いカンケイ」で紹介した問題によく似ています。

再掲になりますが、このコラムでは以下のような例を挙げました。

受注率受注数商談数
Aさん.30030100
Bさん.500510

この時、Bさんの方が受注率(打率)は高いですが、規定打席に到達していなければ、Bさんは評価される以前の問題であることに言及しました。
今回の件も全く同じで、「5回勝負して4回勝つ人」は確かに勝率は高いものの、規定打席に到達しているかどうかがポイントになりそうです。

統計手法による検証

実は、このようなことは統計手法によって解釈することが可能です。
これを検定と言います。
統計手法を用いて解釈した方のまとめがありますので、興味がありましたらご覧ください。

「5回勝負して4回勝つ人」と「100回勝負して60回勝つ人」、強いのはどっち??
同じデータの比較なのに、統計手法によって三者三様の結論になる現象を考えましょう。

ここで言いたいのは、

  • 用いる統計手法によってどちらが優秀かは変わる
  • プロセスを合わせて語らないと、結果だけ伝えても危険

という2点のようです。

私もこの考え方に同意します。
世の中のデータ分析には、結果だけを取り上げる風潮があるように思います。これは仕方のないことで、あまり難しい理屈よりも結果だけ分かればよい、という考え方が一般的だからでしょう。

ですが、データ分析はそのプロセスを理解せずに結果だけを解釈すると、誤った判断をしてしまう可能性があります。

例えば、理由も分からず後者の方が優秀であると判断されて、後者は昇給し、前者は減給されたとしましょう。
前者はどう思うでしょうか。不可解な理由で減給されたと思うでしょう。それを見ていた他の人はどう思うでしょうか。疑問に思うことでしょう。
それに、5回勝負して4回勝っていることは事実としてあるのです。もしそれで前者が会社を辞め、その結果この会社の業績が下がったらどうでしょうか。誰にとっても良い結果にはならないでしょう。

データ分析には、数字的な解釈とは別に説明性が重要です。
結果だけではなくプロセスとセットで解釈することを心がけましょう。

まとめ

いかがだったでしょうか。このように、データ分析はそのプロセスを理解せずに結果だけを解釈すると、誤った判断をしてしまう可能性があります。
どちらが優秀なのか?を考える時には、その判断基準と判断手法も合わせて明確にするようにしましょう。

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