「マウントおじさん」とは
この世の中には「マウントおじさん」と呼ばれる種族が存在します。
「マウンティングおじさん」「マウントじじい」など呼称は諸説ありますが、正式な学術名は不明です。このコラムでは「マウントおじさん」で通そうと思います。
マウントとは、ここでは人間関係において自分の優位性を示すこと、と定義します。
また、「おじさん」と表現していますが、おじさんの場合もあればおばさんの場合もあるし、年齢的に若い場合や、「これはもうおじさんの域を超えたな」という最長老様みたいなケースも存在します。
また、亜種として「指摘おじさん」「オレは話を聞いてないぞおじさん」というクラスタも存在するのですが、今回はそこまでは論じません。
なお、ビジネスの場面だけでなく、趣味界隈でも多数目撃されています。特におじさん色の強いミリタリー系・鉄道系に多いとされています。
今回は具体化の為に、特にビジネスの場面に限定し、さらにこのブログの趣旨に即して、
「既存事業の業績が伸び悩む既存企業で若手が新規事業を立ち上げようとする場合にエンカウントする可能性が高いマウントおじさん的概念」
について述べることとします。
マウントおじさんの傾向
一般的に、マウントおじさんには以下の傾向がみられます。
- 自分の見解と異なる物事の進め方に対して食い付き意見を物申す
- 自分の見解と似たような物事の進め方に対しても言い方を変えて意見を物申す
- 要は何かしら物申す
- 初対面の人に対しては特に厳しく、最初から喧嘩腰の場合が多い
- 多くの場合は自身(または自身が認める上位クラスの人)の経験や知識がベース
- レギュレーションや言葉の定義に細かい
- 自分の誤りを認めない事が多い
- 論破したがる
- そのわりに、理論的というより感情的
- 時間をかけて話をしてみると実は良い人が多い
- 寂しがり屋が多い
- メールに顔文字を使ってくる
- 仲良くなるとやたら飲みに誘ってくる
- 情に厚い
- 擬態する
新規事業創出の場面でのケーススタディとしては、若手がビジョンを語った際に、
「いやいや、そうじゃないでしょ、こうすべきでしょ。」
「事業性についてはちゃんと考えてるのか?(いや、考えていまい)」
とすかさず(または被せるようにして)コメントを放ってきます。
邪推ですが、若い奴にアドバイスをしてやっている、という感情も働いていると想定されます。
また、マウントおじさんは極めて巧妙に擬態します。
マウントおじさんが「マウントおじさんだぞ!」と主張するケースは極めて少なく、一見すると「非マウントおじさん」に見えます。本人にその気はなくても擬態していると言ってよいでしょう。
そして実際に会ってみて、一発目の会話から度肝を抜かれる、というパターンが多いのです。
マウントおじさん増殖の理由
マウントおじさんがここ数年増殖していると言われる理由は諸説ありますが、上記に引用したダイヤモンドの記事によると、
序列にまつわる意識や行動が変化してきたこと
プレイングマネージャーの増加
が挙げられています。
個人的には、マウントを取ることによって自分の存在意義を認めてもらいたい説は有力だと考えています。つまり、承認欲求の変化形ではないかと推察しています。
旧来はプロセス化され型にはまった仕事をしていれば認められてきましたが、時代が変容して「年齢が上」というだけでは誰も認めてくれなくなってしまいました。そのため、自分から自己の存在意義を主張する必要性が出てきた、というものです。
そんな中で事業性が明確でない新規事業を提案してくる若手は、格好の標的でもあります。
「よし、自分の存在意義を主張できる場面がやってきた」。
わざわざ口を挟まなくても良いケースで意見を物申す、それが客観的にはマウントをとっているように見られるようになった、という流れかと思われます。
マウントおじさんの対策
マウントおじさんに対する対処法としては、一般的に以下の3点が挙げられます。
- 敵にする
- 味方にする
- 無視する
まず経験上、敵にすると後々厄介なことになります。
- 「アイツは話を聞かない」
- 「自分勝手なことをする」
という印象を持たれると、次に出会った時に思わぬ攻撃を仕掛けてきます。
具体的に言えば、事業提案の重要会議で突然謎の否定的なコメントを飛ばし、場の雰囲気を一瞬にして凍らせる技を繰り出してきます。
また、何故だか未だ解明されていませんが、マウントおじさんは社内への人脈が広く、高い地位に就いているケースも多いのです。要は、影響力がデカいのです。
従って、敵にすると敵を増殖させる傾向にあるため、まず敵にしないことが肝要です。
特にやりがちなのが、大企業で新規事業を立ち上げようとする場合に、既存事業を否定してしまう、というケースです。
マウントおじさんは既存事業の部門に比較的多く存在するため、
既存事業を否定する
≒マウントおじさんを否定する
→敵を増やす
という結果になります。そして、
「その新規事業を立ち上げるための資金は誰が出してるのか(俺の事業が出している)」
という反語に近い修辞技法を駆使して、徹底的に攻撃してきます。
自分でマネタイズが出来てない以上、反論の余地はありません。そして、例えポテンシャルに満ちたビジネスアイデアだったとしても、すべて水泡に帰すことになります。
そのようなリスクを背負って敵に回すぐらいなら、多少回り道してでも味方につける方がよっぽど良いといえるでしょう。
マウントおじさんを味方につけると、以下のようなメリットもあります。
- 予算をつけてもらえる
- 応援してもらえる
- 味方を増やしてもらえる
ここには、マウントおじさんの傾向で紹介した「自身(または自身が認める上位クラスの人)の経験や知識がベース」「寂しがり屋」という特徴が関係します。
一度マウントおじさんに認めてもらえれば、それが「正」となって、他の人に対してもマウントを取ってくれます。なぜなら、寂しがり屋だから仲間が欲しいのです。
そうすれば、自分が駆けずり回らなくても、自分がいつの間にか評価され、結果的に事業を進める上で有利になります。
既存企業で新規事業を創るうえで、味方が増えることほど大切なことはありません。
この味方を増やすことに、マウントおじさんは非常に重要なポジションを担うのです。
なお、「これはどう頑張っても味方にならないな」というケースも存在します。そのような場合は、第3の選択肢「無視する」を発動させ、出来るだけ距離を置いた方が良いでしょう。
ちなみに、そのような社内政治に力を注ぐよりも、「いっそ既存事業を壊す思いで再構築する」という考え方も、もちろんあって良いと思います。何を選択するかは人によるかなと思います。
マウントおじさんのいない世界
ちなみに、
- マウントおじさんのいない世界に行く
という選択肢もあります。
そんな桃源郷みたいな世界が存在するのかは定かではありませんが、事業創出で言えば、クラウドファンディングやベンチャー企業を立ち上げ、志を共にできる仲間とのみ組む、とか、そもそも日本を出る、とかかと思います。
(ちなみに、日本にしかマウントおじさんは出現しないのか、という命題もあり、それはそれで研究対象としては興味深いです。)
ただ、「金を出すからには口を出す」という人は老若男女問わずいます。むしろ、株式会社における株主はそうですし、ベンチャーキャピタルだって近いところがあります。
資金調達して事業がうまくいったとしても、いずれマウントおじさん的概念には遭遇すると思われるので、早くから対処法を身に付けた方が良いでしょう。
まとめ
以上、マウントおじさんについて整理してみました。
自分自身もマウントおじさん予備軍なのでは?と思うことがあり、改めて整理することで客観的に評価してみようと考え、この記事を書いてみました。
この記事で、これから既存企業で新規事業を作り出そうとする人が、少しでも上手にマウントおじさんと付き合い、ひとつでも多くの事業を創出してもらえると嬉しいです。
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