はじめに
みなさんは、会社でチームを組んで作業に当たるときに、どのようにチームビルディングをしているでしょうか?
開発でも企画でも運用でもなんでも良いのですが、例えば新入社員(新卒・中途に関わらず)がいたり、他部署の方がいたり、外注先の企業の方がいたりすることはないでしょうか。現代は多様性の時代であり、様々なバックグラウンドを持つ方と一緒に仕事をすることが増えていると言えるでしょう。
そんな時、このような思いになることはないでしょうか?
- 初めてチームを組んだ人の「ひととなり」を知りたい
- もっとチーム力を向上して一致団結したい
- それぞれの人の価値や考え方も尊重したい
そんなときにおすすめなのが「ドラッカー風エクササイズ」です。こちらのコラムでは、ドラッカー風エクササイズの内容や具体的な方法について紹介してみたいと思います。
ドラッカー風エクササイズとは
出典
ドラッカー風エクササイズとは、書籍『アジャイルサムライ−達人開発者への道−』で紹介されているプラクティスです。
書籍では「シンプルだが強力なチームビルディングの手法」であり、「質問に答えることを通じて、チーム内の対話と信頼関係をかたちづくる」と紹介されています。
ちなみに、この『アジャイルサムライ』はJonathan Rasmusson氏が著した書籍を邦訳したものですが、英語でもそのまま『The Agile Samurai』というタイトルです。
質問
『アジャイルサムライ』では、「プロジェクトを始めるときに、次の4つの質問をチームで共有してみてはいかがだろうか。」と提案されています。
- 自分は何が得意なのか?
- 自分はどうやって貢献するつもりか?
- 自分が大切に思う価値は何か?
- チームメンバーは自分にどんな成果を期待していると思うか?
自分は何が得意なのか?
自分の得意なことを挙げてみましょう。
新しくチームメンバーになる人はもちろんのこと、普段一緒に仕事をしていても、その人が何を得意としているかは意外と分からないものです。なぜならば、その人の仕事を普段あまり見ていなかった理、その人がやっている仕事がその人が得意としている仕事ではない可能性があるからです。
「得意なことは何ですか?」と改めて聞かれると意外とすぐに答えが出てこない人が多いのではないかと思いますが、なんでも構いません。例えば、
- Excelで表を作成するのが得意
- リーダーシップをとるのが得意
- Pythonでプログラムを書くのが得意
などです。
自分はどうやって貢献するつもりか?
次に、自分はどうやってチームに貢献するつもりかを挙げてみましょう。
先に挙げた「自分の得意なこと」で貢献するのも良いでしょう。あるいは、得意と言えるかどうかは分からないけど、チームの他の人よりも輝ける分野だと思うものがあれば、それを挙げるのでも構いません。
例としては、
- チームの議論に耳を傾け議事メモを取る
- 会議のファシリテートを行う
- 技術的な設計を行う
などです。
自分が大切に思う価値は何か?
さらに、自分が大切に思う価値を挙げていきます。
みなさんは普段どのような価値観を持って仕事をしているでしょうか。仕事に全力を尽くして何が何でも売上を向上させると思っている方もいれば、やるべきことを淡々とやるというスタンスの方もいるでしょう。そのような「価値観」を言葉で表してみてください。例えば、
- 情熱
- 規律
- 笑顔
などです。
チームメンバーは自分にどんな成果を期待していると思うか?
最後に、チームメンバーの視点から見たときに、自分にどんな成果を期待していると思うかを挙げていきます。
自分に対する期待値というものは、面と向かって伝えていないと、意外と自分自身気付いていない場合も多いものです。また、先に挙げた「得意なこと」などを見て新たな期待値が芽生える場合もあるでしょう。例えば、
- チームをリードしてほしい
- ツールの使い方を調べてほしい
- ナレッジを整理してほしい
などです。
ドラッカー風エクササイズの進め方
それでは、具体的にドラッカー風エクササイズを進めてみましょう!
準備するもの
リアルの場合とオンラインの場合とで準備するものが異なります。
リアルの場合
- 開放感のあるスペース
- 模造紙
- 付箋
- ペン
まずは、アイデアが浮かびやすいように、開放感のあるスペースを用意します。会議室でももちろん構いませんが、可能であれば窓があり景色が見えるような場所が良いかもしれません。
各自のアイデアは付箋にペンで記載して模造紙に貼っていきます。ペンは細いボールペンではなく、太めのサインペンがおすすめです。これは、模造紙に貼った時に遠目からでも良く見えるようにするためです。
オンラインの場合
- オンライン会議ツール
- パソコン(またはタブレット)
- オンラインホワイトボード(または表計算ソフト)
まずは、オンライン会議ツールが必要となります。Teams、Zoom、Google Meetなど、なんでも良いでしょう。また、そのツールに接続するためのパソコンが必要になります。パソコンが準備できない場合はタブレット端末などでも良いですが、文字を入力しやすい環境が良いでしょう。
また、オンラインホワイトボードはなるべく用意してください。おすすめはMuralかMiroです。
もしオンラインホワイトボードが準備出来ない場合は、Excelなどの表計算ソフトでも構いません。
時間
例として、チームメンバーが4~5人程度の場合は、1時間程度あると議論が深まって相互理解が進むのでおすすめです。30分~45分程度でも工夫すれば実施は可能です。
進め方
ベーシックな進め方は以下の通りです。45分での実施を想定しています。なお、時間は私の経験値ですので、人数や制約によって変えてもまったく問題ありません。また、付箋やオンラインホワイトボードが準備出来ない場合は、Excelで「行」にチームの名前を書き、「列」に質問を書いた表を用意して、そこに埋めてもらう形でも良いでしょう。
- チェックイン(3分)
- 4つの質問の回答を各自が付箋で書く(5分+α)
- 1人ずつ4つの質問の回答をシェアする(1人4分×人数分)
- ワイガヤタイム(10分)
- チェックアウト(5分)
1.チェックイン(3分)
まずはチェックインの時間を設けます。これは、ドラッカー風エクササイズを知らない人のために説明をしたり、既に知っている人に対して改めて方法を確認したりするためです。
また、チェックインをすることによって「これからこういうワークショップを始めるんだ」と各自が自分の中で心の準備をすることも大切です。
2.4つの質問の回答を各自が付箋で書く(5分+α)
次に、それぞれの質問に対して各自で付箋を書いていきます。
4つの質問に対する回答を書いていくのですから、実は5分という時間はかなりタイトです(1つの質問に対して1分少々しかない)。5分経ったところでファシリテーターの方は「いかがですか?まだ書いている方いらっしゃいますか?」などと問いかけて、まだ手が動いているようならあと3分時間を取るなどしても良いでしょう。
3.1人ずつ4つの質問の回答をシェアする(1人4分×人数分)
4つの質問についての回答が各自書けたと思いますので、1人ずつシェア(発表)していきます。
その際に、「自分はこれを得意だと思ったから、こういうことで貢献したい」というように、それぞれの付箋の関連性などを併せて紹介すると良いでしょう。
聞いている人は黙って聞いているだけでなく、「なるほど」とか「面白い!」とか、リアクションが取れると盛り上がっていいですね!
4.ワイガヤタイム(10分)
各自の発表や付箋について、チームメンバーみんなで自由にトークをする時間です。
例えば、
- ○○さんが、自分にこんな成果を期待していると思うと発表していたけど、私はこんな成果も期待している
- ○○さんはこういうことを挙げていたけど、自分も似たようなことでこういうことが得意だ
- ○○さんが挙げていた価値観は、私が思っていたけど言語化出来なかったものだ
などです。話が盛り上がると、きっと10分では足りなくなるでしょう。
5.チェックアウト(5分)
活動についてのチェックアウトをします。1~4の活動についてふりかえりをしてみましょう。
例えば、
- いろいろな気付きがあって良かった
- シェアしきれないところがあったから、別途時間を取ってまたやりたい
などです。最後の方は時間が足りなくなりがちですが、次につながるように是非この時間を設けられるようにタイムマネジメントをしましょう。
自分たちなりに工夫してみよう
進め方や時間配分はあくまで参考ですので、人数や状況に応じて工夫してみると良いでしょう。
また、必ずしも4つの質問にすべて答える必要はありません。例えば、「今日は得意なことだけを挙げてシェアしてみよう」といったアクティビティも良いでしょう。
さいごに
ドラッカー風エクササイズについて紹介してみましたが、いかがでしたか?
ドラッカー風エクササイズは、シンプルですがとても強力なチームビルディングのプラクティスです。汎用性が高く、どのようなチームでも活用することができます。是非自分たちなりに工夫しながら、チーム力を向上していってください。
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