概要
世界的なデザインファーム「IDEO」の社長兼CEOを担ったティム・ブラウンが記した「デザイン思考」の原著です。デザインシンカーのバイブル、と言われています。
なお、こちらにはアップデート版もあります。
デザイン思考とは何か
この本を手に取った理由は2つあります。
- 事業創出活動の一環でデザイン思考のレクチャーを受け、実践体験をしたことで、デザイン思考に関心を持ったから。
- アジャイル開発にデザイン思考が密接に関わっているから。
1点目は3日程度に及ぶレクチャーと実践体験だったのですが、正直言って「わかったような、わからないような」というモヤっと感が残っていました。極めて概念的で抽象的だなぁと感じたからです。
その後いくつかWeb記事や資料を漁ったのですが、どうにもはっきりしませんでした。
こういう時自分は「原典」にあたるようにしています。原典は変にシンプル化されたり切り抜きされたりしていないからです。デザイン思考にとっては、この本がまさに原典でした。
では、デザイン思考とは何か?本書のパート1はまさにこの問いかけから始まります。
自分なりにポイントだと感じたのは以下です。
- デザイン思考は抽象的に見えるが、その本質は思考の「具体化」(なるほど、だから言語化したり絵を描いたりプロトを作ったりして「目に見える形」に落とし込んだのか、と合点)
- デザイン思考に必要な3つの要素は、洞察(インサイト)、観察(オブザベーション)、共感(エンパシー)(実際に実践体験では「他社の仕事や生活」を文字通り張り付いて観察した)
- 「なぜ?」を問う。「なぜ?」と尋ねることは、問題の枠組みを見直し、イノベーティブな答えを切り開く(たとえば、「この人はなぜこのような行動をするのか」と疑問に思ってみるとか、かな)
つまるところ、どこまでも「人間中心」のアプローチなのだな、と理解しました。徹底的に人間を観察し、共感して、洞察を得る、そして思考を具体化していくことで、人間そのものを理解するプロセス、それがデザイン思考だと考えています。
「T型人間」を目指せ
では、そんなデザイン思考を身につけるにはどうすればよいのでしょうか。
本書は「ハウツー本ではない」とある通り、「こうしたらデザイン思考が身につきますよ」ということは書いていない。ただ、「デザインシンカーはこうすることが多い」というのが書いてあるので、そこがヒントになると思われます。
ひとつ心に残ったのが、個人が異分野連携的な環境で能力を発揮するには、二次元の強みを持っていることが必要だと述べており、マッキンゼーを引用して「T型人間」でなければならない、とされている点です。縦軸に専門的な技術、横軸に分野を超えて共同作業する資質、を置き、広く浅くでも、狭く深くでもなく、両方を必要とするアプローチです。
これは実は、イノベーターやビジネスプロデューサーとしても求められるスキルであると感じています。
他にも
- 早めに何度も失敗する
- インスピレーションを共有する
- 他者のアイデアをもとにする
など、参考になりそうなアイデアが散りばめられていました。
これを読んで「デザイン思考完全に理解した!」とは言えないのですが、少なくともモヤモヤは晴れた気分になりました。
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