概要
日本におけるエバンジェリストの第一人者と言われ、OracleやMicrosoftで活躍されている西脇資哲さんの著書。
エバンジェリストとは何者か?から始まり、エバンジェリストの仕事の仕方や現場の様子をリアリティを持って伝えている一冊です。
エバンジェリストとは新しい価値を伝えるひと
エバンジェリスト、という言葉に初めて出会ったのは、数年前のとあるシンポジウム会場での講演でした。その講演者の方の肩書を見ると、大手通信業者勤務の「エバンジェリスト」とある。一体何者なんだろう?
そう思って講演を聞いたところ、冒頭で「みなさん、エバンジェリストって聞きなれない言葉ですよね?」と問いかけ、エバンジェリストとは「伝道師」の意味であり、自分は新しい技術を広く世の中に伝えるために今ここにいる、ということを語りかけていたことを鮮明に覚えています。
その方は、聴衆が「エバンジェリスト」を知らないことを察して、本来の講演内容とは全く関係が無いのにわざわざ冒頭に2,3分時間をとって、「エバンジェリスト」とは何なのかをきちんと説明されていたのだ。この姿勢こそまさにエバンジェリストだな、と強く実感しました。(ちなみにその方は、その後年間300回以上講演を行う名エバンジェリストとなりました)
本書では、そのエバンジェリストについて、エバンジェリストの第一人者が語っています。著者によれば、エバンジェリストをひとことで定義すると「伝えるひと」であり、より正確でシンプルな定義としては「新しい価値観を伝えるひと」だそうです。
また、製品の価格やスペックといった機能面の魅力だけでなく、その製品を使うことによって実現できる新し世界観も伝えていくことが必要だと述べられています。営業や広報との違いは、企業の代弁者として熱く思いを語るトリガーとして動く、とのことでした。
優秀なエバンジェリストは優秀なエンジニアである
本書では、エバンジェリストにはエンジニア的な資質が必要だ、と語られています。自社だけでなく他社の技術や製品にも広く触れ、自分自身で試してみる。デモをしてみる。そして、その良さを他社に分かりやすく伝えていく。そういうスキルが必要になるそうです。
これを読んで、学生時代の体験を思い出しました。
私は学生の頃に天文学の広報・普及活動に携わっており、一時期本気で将来広報活動で食っていこうと思っていた頃があります。その際に国立天文台のとある先生(とても偉い人)に相談させて頂いたのですが、返ってきた言葉はかなり厳しいものでした。
曰く、「君はまだ天文学の研究を極めていない。ひとつでも何か研究を極めなければ、その魅力を十分伝えられる人にはならない。」ということでした。
「広く様々な分野に精通していれば良い」と思っていた自分にとっては、この言葉は結構衝撃的で、当時は「なんでこんなことを言うんだろう?」と疑問に思っていたのですが、今ではこの言葉の真意がよく分かります。
エバンジェリストについても同じで、技術を極めなければ、それを伝えられる人にもなれないんですね。
事業創出活動への活用
考えてみれば、スティーブ・ジョブズはイノベーターであると共に、たくみなデモと弁舌で人々を虜にする名プレゼンテーターでもあり、iPhoneのエバンジェリストと言っても良いでしょう。
事業を創出するためにはその事業に賭ける「思い」を伝えなければなりません。即ち、エバンジェリスト的な素養が必要になるんですね。
自分はとある肩書で、「○○のエバンジェリスト」と自己紹介するようにしていますが、まだまだエバンジェリストを語るには経験と知識が少なすぎると感じています。今後の活動の中でも「伝える」ことと専門的な知識・技術を持つことの両面を意識しながら、エバンジェリストとしての資質も高めていきたいと決意を新たにしました。
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