事業を生み出す為に必要な「言葉の瞬発力」
ビジネスでは、より短い時間で自身の考えを端的に伝える力が必要とされる場合があります。
たとえば、プレゼン後の質疑応答。たとえば、ピッチ後の軽い雑談。
ポスターセッションでも様々な質問が飛び交い、非常に多くの「会話」が生まれることでしょう。
ここで言う「会話」とは、大きく分けて
- 人と面と向かいながら行う「喋り言葉」での会話
- SlackやLineなどで行われる「書き言葉」での会話
と2つに分かれます。
以前は後者の書き言葉の会話は、メールや手紙や書面などが主体だったため、じっくりと考えてから回答を返せばよかったのですが、現代は物事のスピードが非常に速く、即時の回答を求められます。
SlackやLineのようなチャット形式だと即座に返事をすることが要求され、それは喋り言葉の会話とあまり変わりません。むしろ形として残る分厄介な一面もあるでしょう。
そう考えると、この「瞬間的に言葉を紡ぎアウトプットする力」というのは、非常に重要なスキルになってきます。
ここでは、これを「言葉の瞬発力」と名付けることにします。
「言葉の瞬発力」を鍛えるためには
この「言葉の瞬発力」を鍛えるためには、以下のようなことが必要になると思われます。
- 圧倒的な知識量
- 構造化する力
- 語彙力
これを順に追って考えてみましょう。
圧倒的な知識を頭に叩き込む
まずは、知識が無いと答えようがありません。
自分のプレゼンやピッチに関することは誰よりも詳しくなっておかなければならないし、順を追って論理的に説明できるようになっていなければならないでしょう。
ドメイン知識もさることながら、活用する技術やビジネスモデルにも精通しておく必要があります。
さらに、現代の社会情勢や学問的・研究的なエビデンスなどにも突っ込まれる場合があるため、新聞・書籍を読んで学んだこと、人と会って聞いたこと、などを、頭の中に知識として徹底的に叩き込んでおかなければならないでしょう。
突然ですが、以前受講したスクラムマスターのトレーニングでは、「なぜチームは7±2人(5~9人)で構成されるのが良いのか」ということが話題になりました。
ここで、
- 世界的に見ても軍隊の班編成は4人班×2班のチーム構成で作戦が行われること
- 米国の認知心理学者ジョージ・ミラーが短期記憶が有効的に機能するのはまさに7±2であると論文で述べていること
などを引き合いに出すと、より論理的で納得感があるでしょう。
ちなみにこのことは「マジカルナンバー7」という、どこかのTV局のクイズ番組みたいな名前で流布してるが、実際にジョージ・ミラー本人が「The Magical number seven, plus or minus two: some limits on our capacity for processing information」というタイトルの論文を発表しており、そこから来ています。
構造化して整理する
このような知識・情報はきちんと整理された状態で自分のもとに届くわけではなく、ばらばらに接触することが多いでしょう。
そのため、知識・情報に接触するたびに、それらを自分の中で構造的に組み立てる力が必要になってきます。
これはあの話題と関係あるな。これとこれは結びつきそうだな。
そういったことを考えながらナレッジを構造化していく必要がありそうです。
相手に合わせた語彙力
そして、なんといっても語彙力が必要となります。
ただこれは、ただ単に難しい言葉をどれだけ知っているか、という話ではありません。
相手に合わせた適切な語彙を選択する力、という意味になります。
「相手に合わせた」というのは、それまでの会話で知った相手の知識量やバックボーン、それに相手のいま置かれている現状、に合わせるということになります。
やさしい言葉でも良いので、それをきちんとアウトプットすることが大切になってくるでしょう。
ケーススタディ
ひとつ例を挙げてみましょう。
衛星データ解析ビジネスの紹介をした際に、執行役から
「ロケットの価格って高い気がするんだけど」
というざっくりした質問を受けたときのことです。
この発言をどのように解釈するか、大きく2つ考えられます。
- 衛星データ解析ビジネスを行うために人工衛星が必要であり、人工衛星を打ち上げるためにはロケットが必要であり、そのロケットの製造費や打ち上げ費は高価であると思われる、ということが言いたいが、単に最後のロケットの部分だけが質問の言葉として出てきた
- 単にロケットと人工衛星の区別がつかない
このような場合は、その人の背景や知識量から判断し、もしわからなければ逆に質問すればよいでしょう。
そして、前者であれば、「おっしゃる通り、日本の主力ロケットH2Aの打ち上げ費用は100億円といわれていますが、現在は中型・小型ロケットの市場が活況であり…」と価格が下がってきていることを示唆すれば納得感が強まります。
後者の場合は、「ロケットはトラックで、人工衛星は荷物ですね。クロネコヤマトが荷物をトラックで運んでお家に届けるように、人工衛星もロケットで宇宙に運ばれるんです」といった例え話をすればよいでしょう。
ここで必要な語彙は、「クロネコヤマト」「荷物」「トラック」などの簡単なものですが、それを紡ぎだす力、つまり語彙を選択する力が必要になってくるのです。
まとめ
以上、言葉の瞬発力を付けることが大事だよ、というお話をしました。
よく「現代人はググればよいから記憶しておく必要はない」という人がいるのですが、それには疑問を感じます。
なぜなら、瞬発力のある会話をする際に頼りになるのは、自分の脳だからです。
圧倒的な知識と、構造化して整理する力、そして相手に合わせた語彙力の3つのスキルを備えて「言葉の瞬発力」を鍛えていきましょう。
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