事業創出における収支計画
新規事業を立ち上げようとするとき、収支計画の作成は避けては通れません。
「で、そのアイデア、売上(利益)なんぼなん?」
と聞かれて、答えられない事業には、なかなか賛同は得られないでしょう。
ところが、やってみると気付くのですが、新規事業において収支計画を立てることは想像以上に難しいです。
それもそのはずで、新規事業だから「いくらで売れるのか」がそもそもよく分からないんですよね。前例が無いですし、顧客に新しい価値を提供するとなればなおさらです。
もっと言うと、「いくらで売っていいのか」も分からないです。
前者と後者はちょっと違ってて、前者は顧客サイドの観点で「これなら買うよ」という売価を見つけ出そうというプル型の考え方です。よくリード顧客にヒアリングをして「いくらなら買いますか?」を聞く、といった方法が取られます。
一方で後者は「前例がない新しいサービスだけど、自分達としてはこれだけの価値があると思っているよ」というプッシュ側の考え方です。
ここでは、収支計画を立てるポイントとして、まずは「売値」をどう考えるか、整理してみようと思います。
手法1「因数分解」
自分が色々と書籍やWeb記事をあたってみると、多くはこの「因数分解」方式に集約されると思います。
例えば、売上はモノまたはサービスの単価×顧客数で決まります。
売上 = 単価 × 顧客数
ここで、単価は様々な分け方が出来ます。
例えばファーストフード店であれば、ハンバーガーセットA、ハンバーガーセットB、単品メニューC、のようにです。
単価 = ハンバーガーセットAの単価、ハンバーガーセットBの単価、単品メニューCの単価、・・・
同じく、顧客数も、ハンバーガーセットAの顧客数(売数)、ハンバーガーセットBの顧客数(売数)と出せます。
顧客数 = ハンバーガーセットAの顧客数、ハンバーガーセットBの顧客数、単品メニューCの顧客数、・・・
これと同様の事が、コストに関しても行うことができます。
つまり、売上とコストの要素を分解して明確にしよう、という手法です。
この方式のメリットは、直感的にも理解しやすく、会計処理時も同様の計算をすることがあるため、一般的で分かりやすいことです。細分化することで具体性が増す、ということですね。
一方のデメリットは、単価が変わる商品ラインナップが数多く存在する場合には複雑になりやすい点と、単価と顧客数の見込みをオーダーレベルで間違うと、非常に大きな乖離を生む点です。
たとえば、1,000円の商品について顧客が100万人いると見込んでいた商品の顧客数が10万人しかいなかった場合、売上高10億円と1億円では大きな違いが出ます。
当たり前すぎる話ですが、意外とこのことに気付かずにビジネスを進めてしまっているケースが多いように思います。
手法2「コストから逆算」
コストを洗い出して、営業利益率や粗利率を逆算して売値を算出する方法です。
先ほどのファーストフード店の例で、
コスト = 店舗運営費 + 従業員人件費 + 販促費
とします。 このコストが、年間1億円だとします。
そこで、営利率を50%取るビジネスだったとします。とすれば、
売上 = コスト ÷ 営利率(50%)
で、売上目標は2億円となります。2億円売って1億円コストで出て行って、1億円が営業利益となります。
この目標値を手法1のように細分化してもいいし、その売上をあげるための手段を考えなおすのでも良いと思います。
メリットは、自社内で(特にディシジョンメーカーに対して)説明がしやすい、ということです。自社リソースをこれだけ使うから、その分これだけのリターンを貰いますよ、という論調に出来るからです。
デメリットは、モノやサービスの提供者側の理論で売値を決めているので、顧客側に理解が得られにくい場合がある、ということです。
「場合がある」というのも実はそれぞれで、BtoBの場合などはむしろ顧客側も同じようなことを別のサービスにおいて行っている場合があるので、逆に理解しやすいケースもあります。
相手側から「単価いくらで何時間なんだから、このぐらいの売値では?」と逆に言ってくるパターンもあるでしょう。
価値をお金に換算する?
多くの新規事業は、価値をお金に換算しています。というか、新規だろうがなんだろうが、一般的にサービスは価値をお金に換算しています。
よく取り上げられる事例として、Uberは、安く移動したい人と、車を運転したい人とのニーズをマッチングさせ、その価値をお金にしました。
映画館やアミューズメントパークは、その「体験」を価値として売りにしています。
その時、その値付けはどのように決まるのでしょうか?
考えてみると、非常に奥が深いでしょう。
新規事業を立ち上げる上でも、その価値に値付けをする方法は色々あると考えられます。
この値付け戦略は非常に重要で、ここを間違えると一般的に事業として成り立ちません(成り立ったように見えても、赤字が脱せずに撤退することになります)。
その価値の値付け方が分からない場合は、まずはその価値を享受できる人(企業)のことをイメージしてみるところから考えてみると良いでしょう。
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