概要
Pepper開発に携わっていたロボット開発者・林要さんの書籍です。
この本を始めて読んだのは、自分がPepperアプリ開発をしていた2016年頃。
その後ちょいちょい読み返してはいたのですが、林さんがソフトバンク退職後に立ち上げたGROOVE Xで開発したLOVOTが先日予約受付が開始、情熱大陸で取り上げられていたのを見て、久しぶりに読み返してみました。
ちなみに、著者は肩書として「Pepper生みの親」「Pepper開発リーダー」と表現されることもありますが、後日それについては、色々もにゃもにゃしています。
サラリーマンが書いた起業本
ゼロイチというタイトルは、言わずもがな、「ゼロ」から「イチ」を作り出す事。
トヨタやソフトバンクで経歴を積んできた著者が考える、アイデア発想法やプロジェクトマネジメント法等が書かれています。
一般的な事業創出・企業本は、研究者や一部の資金力のあるアントレプレナーなどによって書かれることが多いのですが、この本はまさに自分と同じサラリーマンであった林氏が執筆しているので、とてもリアリティがあり、「あるある」と感じる節が多かったです。
例えば、
周囲を見渡せば、頭脳御明晰かつ人間関係もそつなくこなす優秀な人ばかり。
トヨタ流の「型」を忠実に守る保守本流の仕事では、とてもではありませんが、まともに戦ったら勝てないと悟らざるをえませんでした。
という一節。自分自身、転職した際に、「なんだこの人たちは?優秀すぎないか??」と軽い挫折感を感じたので、まったく同じ思いでした。
事業部制の力学
自分は「なんでこんなに優秀な人が新規事業の立ち上げに携わらないんだろう?」と不思議に思うことが多かったのですが、本書を読むとあっさりと答えが書いてあった。
すなわち、
既存事業の部門長にはエース級のスタッフを出すメリットがありません。なぜなら、部門ごとに事業目標が設定されており、その目標を達成するためにはエース級の力が不可欠だからです。
そうなのです。
事業部制を敷くと、各事業部には年度目標が与えられます。当然、年度目標を達成する為に、各事業部ではエースを中心にして効率的に業務をこなすようになります。そこでは、リスクの高い新規事業に手を出すよりは、既存事業を守る事が優先されるのです。
その様な時に、会社が部門横断で新規事業を立ち上げようとしても、当然そこにエースを出すようなことはしないのです。
この時、それを自身としてのチャンスと見るか、会社としての危機とみるかは、人によると思われます。
重要なのは、新規事業の立ち上げを良しとしない層も少なからずいるという事を理解しておくことです。
不満を自分のセンサーとする
もうひとつ、本書を読んでいて「あっ」と思ったのが、次の一節です。
自分が感じている不満を大事にせず、「こういうものなんだから、仕方がない」と思い込む方がよほど問題。
そうなのです。自分に照らしあわせて考えてみた時、どんなときにも「バランサー」として振舞おうとする意識が強いため、「ある程度やむを得ない」として不満を押し殺してしまうことがありました。というか、不満をさらけ出すことは未熟な人間が行うことだと考えている節すらありました。
ですが、あらゆるソリューションは課題・問題が起点となる。そしてそれが組織を生み、ビジネスを生むのです。
つまり、不満はビジネスの起点となりうるのだ。
不満への「感度」を高めることで、事業創出への足掛かりにしていきましょう。
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